Three~となりの王子~
涼子に急かされながらやっとお弁当を食べ終えて、残り少ないお昼休みをあたしたちは屋上ですごした。
秋の気配を感じさせる涼やかな風が吹いてきて、涼子の髪をするする梳いていく。
抜けるような青い空に、黒い髪のコントラストがきれいで、あたしはぼうっとそれに見とれていた。
「またぼーっとしてる」
髪をかきあげながら涼子がふりむく。
唇だけで、ふふ、と笑う。
「ほんとあんたっていまどき珍しいタイプだよね。箱入りっていうの?」
「涼子だって、いまどき珍しいよ。黒髪なんて」
チョコレート色に染めた髪の先をつまんで、あたしは反撃した。
そしたら涼子、ふふん、と得意げに笑って、
「だってあたしの美貌を惹きたてるには黒髪がいちばんいいんだもん」
なんてぬけぬけとぬかしたんだった。
自分で言うか?
否定はしないけど!
てかできないけど!
あたしがあっけにとられていると、
「そういえば、最近どうなの。あんたのナイトくんたちは」
涼子がきいてきた。
「…………」
あたしはそのまま黙り込んで、頭のずっと上、風に流されちぎれていく雲を見た。