月へのスパート
 7月18日、陸上部は練習を終えてから、松永先生とミーティングを行った。
「清少は、駅伝は無理だ…」
「先生、どうして紗英が…」
私は松永先生に涙ながらに訴えかけた。先生は一瞬黙り込んだ。
「みんなで清少を支えていくしかない」
「先生、俺、必ず復帰して走ります! 紗英のためにも!」
「佐藤、焦ったらダメだぞ。人はな、他人と勝負することはできない。自分自身と戦うしかないんだ」
 7月19日、瀬野高校の1学期の終業式が行われた。梅雨が明けて一気に夏らしくなった。至る所で蝉の鳴き声が響き渡り、街歩く人々も皆夏の服装をして汗ばんでいる様子であった。体育館での終業式を終え、正午前に1組のホームルームが行われた。
「いよいよ夏休みが始まる。3年生にとっては進路のために最も大事な時期だな。みんなそれぞれ頑張ってくれよ。そして、みんなで清少を助けていこう。ちょっとでもいいから時間がある時に清少のお見舞いに行ってやってくれよな」
服部先生が手で汗を拭いながら教壇の上に立ち皆に言った。
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