ハニートラップにご用心
挙式と披露宴を無事に終え、私達は結婚式のために貸し切った、土田さんのお父さんが経営するホテルの最上階の部屋で休んでいた。
以前結婚の挨拶に行った時にはお会いすることができなかった土田さんのお父さん。今日はなんとか仕事の都合をつけられたらしく、披露宴から参加してくださった。
全てが終わった後にようやく顔を合わせることができたけど、本当に土田さんとよく似た美形だった。
切れ長の瞳と眉間に刻まれたしわが一見、冷たい印象を与えるけど、とても気さくで良く笑う優しい男性。
土田さんのお父さんとお母さん……夫婦で並んでいると、そこだけ時間がゆっくり流れているような穏やかな空気感になる。
運命、なんて臭いかもしれないけど、なるべくして一緒になった二人なんだろう。
今日一日にあった濃密な出来事を思い出して一人で小さく笑っていると、いつの間にか至近距離に土田さんの顔があった。
「わっ……」
驚いて仰け反ると、背もたれのない椅子に座っていたのが仇となりそのまま後にひっくり返る。椅子から転げ落ちる直前に土田さんに抱き寄せられ、事なきを得た。
「す、すみません……」
「まだ触れられるのに慣れない?なんなら、ずっとこっちでいてあげましょうか?」
「い、いえ……」
オネエ口調に戻って少しだけ不満げに唇を尖らせながら、土田さんが私の脇腹に手を差し込む。そのまま抱き上げられてすぐ、ベッドに下ろされた。