ハニートラップにご用心


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商談も無事終わり会社に戻ってすぐ、先方から取引成立の連絡をいただけた。会社に提出する商談についての報告書を作成したあと、その他の雑務もそこそこに土田さんと少し時間をズラして退勤をして、帰宅した。

私の部屋にと与えられた八畳ほどの部屋。本棚、布団、ローテーブルと生活に必要なものを設置していても十分な広さに感じるので、実際はもっとあるかもしれない。

今は燃えてその姿を確認することのできない私の借りていたマンションの一室――ワンルームだったのだが、そこよりも広い。そんな広々とした部屋の片隅、パソコンを前にして私は眉根を寄せていた。


「うーん……」


帰宅してからラフな部屋着に着替えて、小一時間ほど同じようなワードで検索をかけているがそれらしい答えが出て来ず、私は腕を組んで唸り声を上げた。


土田さんが心も身体も一般的な成人男性だとして、わざわざ女性のような振る舞いをする理由が私には分からない。

私自身はそういったことに特に偏見があるわけではない――というよりも、よく考えたことがないのでわからない。

しかし社会的に見て男性が女性のように振る舞うことは一般的なことではないらしく、何かと苦労を強いられることもあるようだ。実際に土田さんが一般的にどういう扱いを受けているのかは知らないから何とも言えないけど、わざわざリスクを背負ってまでそうしているのは何故だろう。


こんなことを詮索しているだなんて本人に知られたら軽蔑されるかもしれないけど、どうにも土田さんが見せた寂しそうな声が引っかかったのだ。


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