ハニートラップにご用心

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聞くところによると、土田さんと柊さんが工場に向かい、発注された製品を取りに行きそのまま取引先の会社が経営する店舗へと直接運ぶということになったらしい。

ミスを犯した張本人である私といえば、力もないので付いていったところで足でまといになるだけだ。

土田さんも柊さんも優しいから決して私のことを否定はしないけど、手伝いを申し出たらやんわりと断られた。ミスをしてばかりで何も出来ない自分が嫌になる。


いつも通り、電話対応をして合間に納品書や見積書を作成する、いつもの事務仕事をする。どうにも気持ちが落ち着かなくて、何度も時計を見ては近くにいた社員に苦笑いをされた。


終業時刻を半刻過ぎた頃、仕事も今日の分は片付きじっと二人の帰りを待っていたのだが――どうやら、眠ってしまったらしい。

ガタン、と扉が揺れるような物音で意識が現実に引き戻された。


「……土田さん?」


音のしたオフィスの扉の方を振り返り、重いまぶたを擦って焦点の合わない視界をあちこちにやるが、その姿は見えない。気のせいだったのかと思いデスクに向き直ると、背後から肩を叩かれて脳みそが一気に覚醒した。

私以外誰もいないはずのオフィスで誰かに肩を叩かれる感覚があるはずがない。

まさか、おば………。


「ただいま、千春ちゃん」


恐怖で潰れそうになる胸を抑えて振り向くと、そこにはいつもと変わらぬ微笑みを浮かべた土田さんがいた。

その隣に疲弊しきった表情の柊さんが壁にもたれ掛かっている。


「お、お疲れ様です!」


慌てて立ち上がって勢いよく頭を下げる。先程の恐怖とは違う、言葉では形容しがたい感情から心臓がドクドクと激しく脈を打って痛い。


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