ハニートラップにご用心
TRAP5 弱気な瞳
「千春ちゃん、可愛い」
私は今、非常に困った状況下に置かれていた。
仕事もきちんと片付き清々しい気分で休日に突入した。いつもより少しだけ遅くに起きてとりあえずテーブルの前にあるソファに座り、カフェオレを飲みながらテレビを付ける。
電源の入ったテレビが映したのは国民にお馴染みのニュース番組だった。画面の左上に表示された時刻は九時過ぎ。
朝ご飯、何にしようかな。
今からだとお昼ご飯の時間が微妙になってしまう。かと言って何も口にしないのも空腹に耐えられるか、と色々と考えていると土田さんがいるであろう寝室の扉が開いた音がして、反射的に振り向いた。
「あ、土田さん。おはようございます」
彼も私と同じように少しだけ多目に睡眠時間を取ったのであろう、扉から覗かせた顔はぼんやりしていて、髪の毛がくしゃりと乱れている。
「んー……」
黒いTシャツに大きめのグレーのスウェット。土田さんは基本的にお年寄りのように規則正しい生活をしているから、私が寝起きの姿をお目にかかれる日が来るとは思っていなかった。
返事の代わりに聞こえてきた気の抜けた声に私は少しだけ驚きつつも、新たな一面を見ることができたと少しだけ嬉しく思ってしまう。