ハニートラップにご用心

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


年末年始の仕事納めに向けてすでに動き出している企業に合わせて、私達の部署もそこそこ忙しくなってくる時期。毎日膨大な量の仕事をこなしていた。さすがに毎日パソコンの前で資料や作成書類と睨み合っていたら肩も凝るし、精神的にも疲れる。

帰宅してご飯を食べてシャワーを浴びたところで力尽きた私は、リビングのソファの上にうつ伏せで寝転がっていた。


「もう、千春ちゃんったら……」


テレビの音声に混ざって土田さんの優しい声が聞こえてきて、私がそれに反応して身体を動かすより先にふくらはぎあたりに重みがかかった。


「あだだっ!」

「はいはい、詰めて詰めて。邪魔よ〜」


ソファを占拠してきた私のふくらはぎを土田さんの大きな足で踏みつけられた。痛みから逃れるために勢いよく起き上がってそちらを見れば、シャワーを浴びたあとの清々しい表情で土田さんが私の足のあった場所に腰掛けていた。

踏みつけられた左のふくらはぎをさすりながら、唇を尖らせてソファの上で体育座りをして縮こまる。


晴れて恋人になったというのに、その扱いは以前と変わらない……というより、むしろ色々容赦がなくなっている気がする。それもある意味信頼してくれてるんだと思えば嬉しいけど。

透明なグラスに入れたミネラルウォーターを飲み干した土田さんは、いじけている私に気が付いて横目で一瞥をくれた。

それからグラスをテーブルの上に置いたかと思うと、少しずつ身体の重心をずらして私の方へと寄ってくる。


< 83 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop