悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
どうやらここが村の中心地みたい。
建物のうち一棟は教会で、他は診療所と、日用品や食料を売る店のようだ。
行き交う人は女性と子供が、たったの五、六人。
子供たちは遊びに夢中で、女性は買物に忙しそう。
私たちに目を止める人がいないということは、農村の風景に溶け込んでいるこの衣装のおかげに違いなかった。
「今日も特に問題はなさそうだ」と王太子が頬を綻ばせて言うと、斜め後ろを歩くグラハムさんが答える。
「ブドウの生育も順調ですし、ここはいつも平和でよい村です。これも殿下のお力ですね」
「いや、俺はほんの少しの力添えしかできないよ。豊かな大地を守り、たくさんのブドウを実らせているのは、彼らの日々の努力に他ならない。村人に感謝しよう」
「はい」
まるで視察中のような会話が交わされるのを、王太子の隣で耳にしながら、私は不思議な気持ちにさせられていた。
お供を大勢引き連れての仰々しい視察ならともかく、王太子が農民になりすまして、お忍びで視察に出向くなんて聞いたことがない。
臣下の貴族に命じて視察させ、王族は報告を聞くだけなのが普通なのだ。
けれども、気さくでお人好しの彼なら、そうやって自らの足で各地を歩いて回ってもおかしくはない。
王族らしからぬ変わった言動を取る彼だけど、豪華な椅子に座って動かない君主より、素敵に思えるわ。
どうしてかしら……。
建物のうち一棟は教会で、他は診療所と、日用品や食料を売る店のようだ。
行き交う人は女性と子供が、たったの五、六人。
子供たちは遊びに夢中で、女性は買物に忙しそう。
私たちに目を止める人がいないということは、農村の風景に溶け込んでいるこの衣装のおかげに違いなかった。
「今日も特に問題はなさそうだ」と王太子が頬を綻ばせて言うと、斜め後ろを歩くグラハムさんが答える。
「ブドウの生育も順調ですし、ここはいつも平和でよい村です。これも殿下のお力ですね」
「いや、俺はほんの少しの力添えしかできないよ。豊かな大地を守り、たくさんのブドウを実らせているのは、彼らの日々の努力に他ならない。村人に感謝しよう」
「はい」
まるで視察中のような会話が交わされるのを、王太子の隣で耳にしながら、私は不思議な気持ちにさせられていた。
お供を大勢引き連れての仰々しい視察ならともかく、王太子が農民になりすまして、お忍びで視察に出向くなんて聞いたことがない。
臣下の貴族に命じて視察させ、王族は報告を聞くだけなのが普通なのだ。
けれども、気さくでお人好しの彼なら、そうやって自らの足で各地を歩いて回ってもおかしくはない。
王族らしからぬ変わった言動を取る彼だけど、豪華な椅子に座って動かない君主より、素敵に思えるわ。
どうしてかしら……。