悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「愚かだなんて、そんな……。レオン様はまだ幼い少年でしたのよ?」


首を横に振り、繋がれている手を強く握り返した。

彼が心を痛める必要はどこにもないのだと説得しようとしたのだが、私の言葉で彼はさらに後悔を重ねてしまう。


「そう、幼くてなんの力もないせいで、ベイルを守ってあげられなかった。斬った相手が王太子である俺だったから、心を病んでいても減刑には繋がらず、彼は処刑されてしまったよ。俺は、なるべく苦痛の少ない方法にしてほしいと、父上に願い出ることくらいしか、してあげられなかったんだ……」


青い瞳はどこまでも澄んでいて、まるで聖水のようだ。

その目に私をまっすぐに映すのは、穢れなき思いの中に私をも取り込もうと狙っているからなのか……。


残念ながら、彼の思惑通りに私の心は動かない。

暗殺未遂犯に同情し、怒りを覚えることさえなく、負傷しながら犯人を心配したとは、呆れるほどの人のよさだと思うばかりだ。


「清らかなお心をしていらっしゃるのは素晴らしいことですけれど、優しすぎますわ」


思わず非難すれば、なぜかフッと口元を緩めて微笑される。

< 129 / 307 >

この作品をシェア

pagetop