悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
フリント伯爵夫人の気持ちはわかるけれど、私の趣味は裁縫やレース編みで、絵画や彫刻への興味は薄い。

我が家にも著名な芸術家たちの作品が数多く飾られているので、見慣れているということもある。

それに昨年の開館式では、一家で出席してあげたのだから、今回は行かなくてもいいだろうという思いもあった。


一歩の距離を置いて足を止めた王妃に「王妃殿下はご出席なさるのでしょうか?」と尋ねる。

貴族女性の最高峰に位置する王妃は当然招待されているはずで、私の不参加を非難するからには、出席の返事を書いたのだろうと予想して聞いていた。

ところが、煩わしそうにため息を漏らす王妃に、「お断りしたわ。わたくしはいいのよ」と言われる。


「その日は他に用事があるから仕方ないわ。ルアンナも行きたくないと言ったから、婚礼の準備に忙しいという理由で、断り状を届けさせたのよ」


『他に用事が』と言った王妃だけど、その口ぶりからするとただの口実のようだ。

興味がないから面倒だというのが本音に違いない。

なによ、私と同じじゃないの……。


王族と公爵家に招待状を書いたのに、揃って欠席の返事が届いて、フリント伯爵夫人は慌てたに違いない。
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