悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
それから二日後。
十九時になり馬車で王城を出発した私は、王都の中心部を東西にまっすぐに延びる大通りを進み、フリント伯爵家所有の美術館へとやってきた。
入口で私を出迎えてくれた伯爵夫人は、ふくよかな体型をした私より二十ほど年上の女性。
しかし、その地位は私より下のため、恭しくお辞儀をしてから、手揉みをして話しだした。
「ようこそお越しくださいました。お忙しい中、ご都合をつけてくださいまして感謝いたします。さあ、中へお入りくださいませ。皆様もオリビアさんのご到着をお待ちですわ」
皆様という夫人の言葉に、気が引きしまる。
フリント伯爵夫人は、よく言えばおっとりとして温和な人柄で、悪く言えば鈍感で気の利かないところがある。
もし夫人が、私と……いや、オルドリッジ家と相性の合わない貴族を招待していたら、煩わしい時間を過ごさねばならないと危惧していた。
その予感は残念ながら、あたっていることがすぐにわかる。
広々とした美術館のロビーには、十二人の婦人がいて、三つの小集団に分かれて会話をしていた。
入口にほど近い白大理石の柱の前で立ち話に興じる婦人たちの顔を見て、私は小さなため息を漏らす。
アクベス侯爵家の夫人と娘がいたのだ。