悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
アクベス侯爵家と私の家は、表面上でも友好関係を築けぬほどに深い溝がある。
その昔、曽祖父の代の頃に、母の一族を滅ぼそうとしたのがアクベス家なのだ。
そのやり方が、腹黒いものだった。
密約を交わして隣国に奇襲させておきながら、その侵攻を半分で食い止めた功労者のふりをして、辺境伯領の南側半分の支配権を奪ったそうだ。
密かに生き延びていた母が家を再興させたことで、領地を取り戻すことができたけれど、王都に次ぐ大きな貿易港や豊かな農地を手放さねばならなくなったアクベス家からは恨まれることになった。
その気持ちは、こちらとて同じこと。
先祖の恨みは、まだ完全に晴らすことができていない。
領地は戻っても、アクベス家が隣国と共謀した証明ができず、なんの賠償もない。罰を受けさせることもできなかったという。
変わらず侯爵という高い地位を守り続けているアクベス家の実権は、婿入りした当主ではなく、侯爵夫人にあるとも父に教えられた。
小集団の話題をリードしているのは、そのアクベス侯爵夫人で、四十歳間近には見えない若々しく美しい見た目をしている。
その隣にいるのは、私と同じ歳の娘のロザンヌ嬢だ。
黄褐色の艶やかに波打つ髪と、白く滑らかな肌。愛らしい顔立ちをしているが、気の強さは猫のような目に表れていた。
侯爵夫人より先に私に気づいた様子の彼女が、ハッとした顔をして母親に耳打ちしている。
その昔、曽祖父の代の頃に、母の一族を滅ぼそうとしたのがアクベス家なのだ。
そのやり方が、腹黒いものだった。
密約を交わして隣国に奇襲させておきながら、その侵攻を半分で食い止めた功労者のふりをして、辺境伯領の南側半分の支配権を奪ったそうだ。
密かに生き延びていた母が家を再興させたことで、領地を取り戻すことができたけれど、王都に次ぐ大きな貿易港や豊かな農地を手放さねばならなくなったアクベス家からは恨まれることになった。
その気持ちは、こちらとて同じこと。
先祖の恨みは、まだ完全に晴らすことができていない。
領地は戻っても、アクベス家が隣国と共謀した証明ができず、なんの賠償もない。罰を受けさせることもできなかったという。
変わらず侯爵という高い地位を守り続けているアクベス家の実権は、婿入りした当主ではなく、侯爵夫人にあるとも父に教えられた。
小集団の話題をリードしているのは、そのアクベス侯爵夫人で、四十歳間近には見えない若々しく美しい見た目をしている。
その隣にいるのは、私と同じ歳の娘のロザンヌ嬢だ。
黄褐色の艶やかに波打つ髪と、白く滑らかな肌。愛らしい顔立ちをしているが、気の強さは猫のような目に表れていた。
侯爵夫人より先に私に気づいた様子の彼女が、ハッとした顔をして母親に耳打ちしている。