悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
私を先導するフリント伯爵夫人が彼女たちに近づいて行くので、挨拶を避けるわけにはいかないようだ。


「皆様、オルドリッジ公爵家のオリビアさんがいらっしゃいました」


呑気なフリント伯爵夫人がにこやかに声をかけ、私は口元に無理をして笑みを作る。


「ごきげんよう。マリオット伯爵家の舞踏会以来ですわね。またこうしてご挨拶できることを、喜ばしく思いますわ」


アクベス家と犬猿の仲とはいえ、お互いに高い地位にあるため、大きな宴や催しで顔を合わせることは度々ある。

サロンパーティ程度ならば、主催者が気を使って同時に招待することは大抵ないのだけれど、今回はフリント伯爵夫人が鈍感なため、こうして挨拶せねばならなくなってしまった。


マリオット伯爵家の舞踏会とは、毎年秋に開かれている大規模なもので、一週間前に参加したばかりだ。

その時にも私は、アクベス家の母娘に敵意のこもる視線を向けられた。

それは家同士の確執というよりはレオン様のせいで、『俺の馬車で一緒に行こう』と誘われたため、彼にエスコートされての登場となってしまったのだ。

当然のことながら、彼の花嫁の座を狙う娘とその親たちに嫉妬の目で見られ、ヒソヒソと陰口を叩かれた。

その中にはロザンヌ嬢もいて、彼女もレオン様の花嫁候補のひとりである。

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