悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
短期間での再会に嫌悪を覚えつつも、喜ばしいと口にしてあげたのに、アクベス侯爵家の母娘は目配せし合って、馬鹿にするようにクスクスと笑っている。

それから侯爵夫人が上品な笑顔を浮かべて、私をからかった。


「今日はおひとりですのね。これ見よがしに、王太子殿下といらっしゃるのかと思っておりましたわ。母親に似て、殿方のお心を操るのがお上手なご様子ですから」


その失礼な物言いに、ロザンヌ嬢が吹き出し、周囲にいる三人の婦人たちも同調して耳障りな笑い声をあげていた。


私の母は男性に媚びるタイプではないのに、そんな侮辱は許せない。

母を貶められたことが腹立たしく、ただちに反論しようとした私だったが、フリント伯爵夫人に遮られる。

私とアクベス家の人を引き合わせたことが不適切だったとやっと気づいた様子で、伯爵夫人は慌てて言った。


「み、皆様、少々早めですがお食事にいたしましょう。その後に、美術館をご案内します。今宵は心ゆくまで芸術の語らいをお楽しみくださいませ」


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