悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
ぞろぞろと奥の部屋に移動して、会食となる。

それは晩餐会ほどの豪華なものではなく軽食程度で、食事をしながら講師として招かれた画廊商の老婦人の話を聞く。

美術作品の評論家でもあるという老婦人の講釈を、心から興味を持って聞いている人は、どれくらいいるのか……。

貴族女性の招待客は私を含めて十五人いて、四つの丸テーブルに分かれて着席している。

私は黙って聞いているけれど、隣同士でヒソヒソと関係ない話をしている人が多く、私たちの前に出て、油彩画について解説している講師が気の毒に思えた。


四十分ほどの会食が終わると、一行はフリント伯爵夫人に連れられて展示場に移動する。

小規模のダンスホールほどの広さの空間に、絵画が三十点、彫刻が十点ほど展示されていた。

フリント伯爵夫人としては、講師に解説してもらいながら、作品をひとつずつ回りたかったようだけど、参加者が気の合う者同士で勝手にあちこちへ散ってしまったので、早々に諦めたようだ。


私は近くにある作品から順に見て歩く。

隣についてくるのは、フォスター伯爵夫人。

大きめの丸い鼻が愛嬌を感じさせる二十三歳の彼女は、お喋りと噂話を好む人だ。

私から離れようとしないのは、オルドリッジ家に取り入ろうとする目的ではなく、噂話のネタを探しているからだろう。

私が王妃の侍女になった話は既に知られていて、「なぜそのようなことに?」と理由を探ろうとしてきた。

< 145 / 307 >

この作品をシェア

pagetop