悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
父が私を王太子妃にしたがっているからだという本当の理由を避けて、「社会勉強をさせていただいておりますの」と私は澄まし顔で答える。

「そうでしたの」と頷く彼女だけど、納得する答えではなかったようで、好奇心旺盛な目で質問を重ねてきた。


「王城にお住まいでしたら、王太子殿下とお顔を合わせる機会も多いのでしょうね。もしかして、お茶の時間に招かれたりされるのでしょうか?」


有名画家の静物画を眺めていた私は、その問いに思わず彼女を横目で睨むように見てしまう。

どうやらフォスター伯爵夫人が一番知りたいことは、私が王太子妃候補者の中で、どれくらい抜きん出ているのかということみたい。

私から得た情報を元に、あちこちで噂話を楽しみたいという魂胆が、その顔に表れていた。


呆れる私は無言で冷たい視線だけを返す。

するといささか質問が直球すぎたかと焦った様子で、彼女は取り繕うように笑って言い訳を始めた。


「そ、その……この前の舞踏会ではご一緒のお姿を拝見しましたので、何気なく聞いてみただけですの。根掘り葉掘り聞き出そうなどと考えておりませんので、どうかお気を悪くされないでくださいませ」


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