悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
『ご一緒のお姿』と言われたけれど、舞踏会の間中、レオン様と寄り添っていたわけではない。

エスコートされて会場に到着した後は、彼は群がる貴族たちとの挨拶に忙しく、私はすぐにそばを離れた。

ダンスも彼と踊ったのはワルツを一曲だけで、他の令嬢より少なかったわ……。


私の機嫌を取ろうと話しかけてくるフォスター伯爵夫人から、目線を展示場の奥に移す。

高さは大人の背丈の二倍ほどもあろうかという大きな宗教画の前にたむろして、鑑賞せずに雑談に興じているのはアクベス家の母娘と、その取り巻きのような婦人たち、合わせて五人の集団だ。

それを見て、そういえばロザンヌ嬢は、レオン様と続けて二曲を踊っていたことを思い出し、なぜか不愉快な思いが込み上げた。


話題を変えて、しきりに話しかけてくるフォスター伯爵夫人に適当に返事をしながら、私は白大理石の彫像の前に移動する。

フロアの中央に展示されているそれは、青年の全身裸像で、台座に記されている作家名は私の知らないものであった。

丁寧に美しく作られた彫像に、これから注目を浴びる若手作家の作品なのかもしれないと、その名を頭に刻み込む。


急に興味を彫像に移し、真剣に鑑賞しようとしているのは、自分の心をごまかすためだ。
< 147 / 307 >

この作品をシェア

pagetop