悪役令嬢の華麗なる王宮物語～ヤられる前にヤるのが仁義です～

私以上の曲数を、ロザンヌ嬢がレオン様と踊ったことへの不快感。

これはもしかして、嫉妬なのだろうか？という疑問が湧いていた。

それと同時に王太子妃を狙っていない私が、なぜ妬かねばならないのかと、そのことにも首を傾げたくなった。

これらの疑問を追及すれば、心が乱され冷静さを欠いてしまいそうだ。

今は考えるべきではないと判断して、目の前の彫像への感想を心の中に並べ立てていた。


血管や筋まで見事に彫り上げて、技術の高さが窺える。

髪の毛の表現の仕方は独特だが、不自然さはなく、万人に受け入れられそうな嫌味のない顔立ちに作られている。

美しいわね。お父様にお教えしたら、買い取りたいというのではないかしら……。


彫像の周囲をゆっくりと一周してから正面に戻った私は、ふと違和感を覚える。

素晴らしい作品には違いないけれど、バランスがおかしいように感じたのだ。

上半身に対して下半身が小さめな気がする。
頭部は実際の人間よりも少々大きめに作られているようだ。


これは作家のミスだろうか？と思った後に、ひょっとして……とある可能性に気づいて、私はその場にしゃがみ込んだ。

下から像を見上げ『やっぱりそうだわ』と心に呟いたら、突然後ろから女性数人の嘲るような笑い声が響いた。