悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「王妃殿下は人形遊びの好きな子供だと仰っておいででしたのに、そのような本性を隠していらっしゃったのね」とペラム家の夫人が口にすれば、取り巻きの別の婦人がこんなことを言い出す。


「じっくりご覧になっておいででしたけど、この像と、今まで目にしたことのある肉体を頭の中で比較していたのかしら? オリビアさんに近寄る殿方は大勢おりますもの。きっと大勢の男性を知っていらっしゃるのでしょう」


ロザンヌ嬢は「まぁ!」と大袈裟に驚いて、「未婚の身で、もうご経験が? わたくしにはとても真似できません」とわざとらしく顔を覆って恥ずかしがってみせていた。


私の隣でオロオロしているのは、フォスター伯爵夫人。

彼女を味方だと思っていなかったけれど、「あの、外の空気を吸って参りますわ」と逃げ出したのを見て、ため息をついてしまう。

そのため息で、私が心を弱らせていると思ったのか、調子づいたロザンヌ嬢は私の服装までを批判し始める。


「とても上品な装いでいらっしゃいますけど、夜会にはもう少し工夫が必要ではないかしら? 普段と変わらぬお召し物ですと、主催者に失礼ですわ」


確かに今宵の私の衣装はシンプルだ。

落ち着いた深緑色のドレスは襟元の開きが控えめで、レースに縁取られたシルクのチョーカーを首に巻いただけ。宝石類は身につけていない。

目に止まるものは、下ろし髪のサイドに留めた銀のバラの髪飾りくらいだろう。


それには理由がある。

このサロンパーティに出席することにしたのは二日前で、今日のために衣装を新調することはできないし、興味のない集まりにめかし込む気にもなれなかったからだ。
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