悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
けれども、非難されるほどのひどい衣装では決してない。

地味に見えてもドレス生地は一級品。チョーカーも靴も、なにもかもが特別注文で仕立てさせた高価なものだ。


それに対してロザンヌ嬢はというと、一見すると華やかな装いではある。

淡い紫色の夜会用のドレスは、スカートの後ろ側に襞を寄せてボリュームを出し、レースやリボンで飾られていた。

大きく開いた胸元には、豪華な三連のダイヤのネックレスも輝いている。


控えめな私と、飾り立てた彼女。

しかし貴族令嬢の装いとして、私の負けではないようだ。


そのネックレスは、ダイヤがいくつもぶら下がっているのかと思ったけれど、よく見れば光の反射がおかしい。

ダイヤを模したガラス玉に違いない。

そういえば、一年ほど前のことだったか、我が家に出入りしている宝石商が、デザインのサンプルとして、ロザンヌ嬢がつけているものとよく似たネックレスを私に見せたことがあった。

『これはガラス玉ですが、ダイヤでお作りしませんか?』と言って。

デザインが私の趣味ではなく、シンプルな一連のネックレスに大粒のダイヤがひとつついているものを作らせたのだけど、もしあのとき私が注文していて、それを今日つけてきたなら、どうなったことだろう?

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