悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
ロザンヌ嬢のドレスにも気づいたことがある。

紫色の染料は貴重なので、ドレスを仕立てるとなると、他の色の三倍ほどの値段になる。

彼女の着ているドレスは高価なものには違いないが、デザインが古い。

きっと母親の娘時代に作ったものであろう。

その頃のアクベス家は、今よりずっと裕福だったと想像できる。

私の母の一族から奪った豊かな辺境伯領を支配していたのだから。

母親のお下がりのドレスで虚勢を張るロザンヌ嬢は滑稽で、同時にアクベス家の財政状況が芳しくないことが窺えた。


おかしさが込み上げて、私は口元に薄く笑みを浮かべる。

するとアクベス侯爵夫人に「そういうお顔をされるところもクレアさんにそっくりね」と嫌そうに言われた。

攻撃の矛先が母に向きそうなのを感じて、私はスッと笑みを消し、冷たい視線を五人に向けた。

アクベス母娘の取り巻きたちは気圧されたように息をのんだり、足を半歩下げていたが、ロザンヌ嬢はムッとした顔をして睨み返してくる。

侯爵夫人だけは余裕のある笑みを浮かべ、私の弱点を見つけたとばかりに母への侮辱を並び立てた。


「クレアさんは貧しい町で平民としてお育ちだったらしいわね。孤児院にも入っていたと聞きましたわ」


その通りだけど、それは汚い陰謀を企てて母の一族から領地を奪ったアクベス家のせいである。

証拠がないから表立ってアクベス家を非難するわけにもいかず、私たちは未だに悔しい思いから抜け出せない。

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