悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
ロザンヌ嬢は口元を綻ばせて、「わたくしにもまだ可能性は残されていると考えてよろしいのですね?」と念を押すように確認している。

『その通りよ』と心の中で答えた私だが、レオン様の返事は違った。

透き通るような青い瞳に彼女を映し、やや声を鋭くして、彼らしくない淡々とした口調で答える。


「俺は、共に国民を想い、平和の道を歩める令嬢を伴侶に選ぶつもりです。人の大切なものを奪って壊そうとする女性は遠慮したい」


ロザンヌ嬢も私もハッとして、先ほどの一戦をレオン様に見られていたことに今気づいた。

いや、違う。

見ていたとしたら、優しい彼ならすぐに止めに入りそうなものだし、きっと床に座り込んで髪飾りを磨く私や、後ろでいきり立つアクベス母娘の様子を目にして、なにがあったのかを瞬時に理解したのだろう。


私がなにも言わずとも、わかってくれていたことに、胸が震える。

『迎えに来て正解だった』と言ったのは、今日のサロンの出席者を王妃から聞いて、不安に思ったためなのか。

彼は私が集中攻撃に合う危険性を感じ、助けに来てくれたに違いない。

こんなふうに男性に守られたのは、初めてよ……。


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