悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
レオン様のマントをぎゅっと握りしめると、彼は瞳を弓なりに細めて私を見た。

そして私と目を合わせたまま、後ろで青ざめているロザンヌ嬢に続きを答える。


「発表はもう少し先と言ったけど、それほど遠くはないみたいだ。固い蕾が花弁を開きかけた気配がするからね」


それは私の心のことなの?

完全に花開いたら、レオン様は発表する気でいるのかしら。私を花嫁に選んだと……。


問いかけたいけれど、このような場所で聞くべき話ではない。

「帰ろう」と言われ、忙しなく心臓を動かす私は、止めていた足をドアへと進める。


外に出ると、真っ暗な空からサアサアと音を立てて雨が降っていた。

王家の紋が入った二頭引きの馬車が一台、玄関ポーチに横付けされている。

御者がドアを開け、私たちが乗り込むとすぐに馬車は夜道を走り出した。


中型馬車内の座席は革張りで、私の左隣にレオン様が座っている。

「寒くない?」と気遣ってくれる彼に頷いてから、「先ほどは、ありがとうございました」とお礼を述べた。

なにについての感謝かは、説明せずとも理解してくれたようだ。

「いや、もう少し早く来るべきだったんだ。助けるのが遅れたせいで嫌な思いをさせてしまった」とため息まじりに言ってから、彼は「すまなかったね」と謝った。

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