悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
でも、これでいいのかもしれないわ。
清らかな彼に私が相応しくないのは、前から感じていたことよ。

自分の中にそう結論づけて、芽生えたばかりの恋心を胸の奥にしまい込もうとする。

すると突然フッと笑ったような声がして、「嬉しいな」という呟きも聞こえた。

予想外の反応に驚いて隣を向けば、彼は変わらぬ好意的な目で私を見てくれていた。


「君は人を傷つけたと後悔しているんだね。そう思うということは、今後は態度を改めるつもりなのだろう? 君は変わろうとしている。それが俺のせいであるなら、とても嬉しい」


レオン様があまりにも優しい言葉をかけてくれるから、頬が熱くなり、思わず私は甘えたくなってしまう。

膝の上で握りしめていた手を開き、そっと彼の方へ右手を伸ばせば、その手を取ってしっかりと握りしめてくれた。


「私は変われるのでしょうか? レオン様のような綺麗な心に……」


変わりたい思う気持ちを口にしたら、やはり不安が押し寄せる。


「でも変わってしまえば、どうやって他の貴族と渡り合えばいいのか……。武器を捨てるような心持ちで、怖いのです」


臆病で弱い自分を他人に見せるのは初めてのこと。

それほどまでに心を開いている自分に戸惑い、目を泳がせていた。


すると繋がれた手を引っぱられ、抱きしめられる。

すっぽりと私を包むような広い胸と、逞しい二本の腕。

心臓を大きく跳ねらせたら、耳元に頼れる声を聞いた。
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