悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
その直後に私はハッとして、心に動揺の波が広がる。

彼の青い瞳はいつもの透明感が消え、濁っているように見えたのだ。

薄暗い部屋のせいであればいいのだが、私の心の黒さが伝染してしまったのではないかと不安に襲われていた。


「レオン様……」と震える声で呼びかければ、彼は瞳を覗かれまいとするように、私の頭に手をあて、はだけたその胸に押しつける。

図らずも彼の鎖骨の下あたりにキスをしてしまい、頬を熱くしたが、甘い喜びに浸ってはいられない。

静かで冷たい彼の声が、耳に聞こえる。


「君を傷つけようとする者には容赦しない。抑えきれない激しい怒りというものを、初めて味わっている」


私のせいで彼が変わろうとしているのを知り、不安に肩を震わせた。


「俺に欠けていたもの。それは悪を非情に裁く勇気だ。優しいだけでは大切な人も守れない。オリビア、気づかせてくれてありがとう。強き王となり善良な民を守るには、君が必要だ」


強い意志の中に、腹黒い父に似たものを感じ取っていた。

これまでの聖人のようなレオン様は、もう消えてしまったのね……。


彼の肩に目を押しあてれば、黒と白の絵の具が混ざり合う様子が見えるような気がしていた。

私たちはお互いに影響し合い、同じ色になろうとしているところなのかもしれない。

それがいいことなのか、悪いことなのかは判断がつかないが、動揺する私の目には涙が浮かび、彼の逞しき肩をしっとりと濡らしていた。


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