悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
アクベス侯爵は、アクベス家のひとり娘であったルイーザ夫人に婿入りする形で当主となった人で、あの家の実権を握っているのは夫人だと言われている。

だから、私が王太子妃になることをなんとしてでも阻止したい夫人が真の首謀者で、侯爵は夫人の指示に従っただけであろう。

けれども取り調べにて、全ては自分が企んだことで、家族は無関係だと侯爵が主張したため、彼だけにもっとも重き裁きが下された。

それは、公開処刑だ。


見せしめの意味もあるこの刑が王都で執行されるのは、十六年ぶりのことだという。

十六年前に公開処刑にされた罪人は、レオン様を斬りつけたベイルという兵士だ。

今回の私の暗殺未遂は、結果としてレオン様の命まで危険にさらしたということを重くみての裁きである。


当主亡き後のアクベス家の領地は、王家の直轄領とされ、レオン様の臣下が統治することになった。

夫人とロザンヌ嬢は国外追放を命じられたそうだが、頼る先のない他国で、今頃どうしていることか……。


どうしてもロザンヌ嬢を気にかけてしまう。

気を紛らわせたくて始めたレース編みにも集中できず、私は手を休めて大きく息を吐き出し、赤く弾けた薪に向けて、「これでいいのよ……」と呟いてみた。

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