悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
私とレオン様の婚約発表は、もうすぐそこに迫っているのだから。


最初は王妃を説得してからと考えていたレオン様は、彼の寝室で王妃と衝突して以降、その考えを改めた。

強硬的に私との結婚を押し進めるつもりのようだ。

毎年の恒例行事として、年の暮れに有力貴族を招いての王城晩餐会が催される。

今年はそれが五日後に予定されていて、レオン様はそこで婚約発表すると、数日前に私に告げた。

王妃の反対は覚悟の上で、国王は反対こそしていないようだが、『もう少し落ち着いてからの方がよい』と言ったそうなので、晩餐会では一波乱あることが予想される。


レオン様が頼もしく、『君は心配しなくていい。全てを俺に任せて』と言ってくれたけど、緊張と不安でこの心の揺れは収まる気配がない。

本当に大丈夫かしら……。


何度目かのため息をついてから、私は再びかぎ針を操り、一本の糸で模様を描き始める。

テーブルクロスに編み込む図柄は、平和の象徴であるオリーブの枝をくわえた白い鳩。

王都のざわつきも、私たちの身辺も、この心も、早く落ち着いてと願いながら……。


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