悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
戸惑う視線を横に流せば、父が満足げに頷いて王太子を見ていることに気づく。

私にはしたたかに生きろと教えを垂れる父なのに、まるで得にもならない王太子の善行を肯定しているかのような態度だ。


十分に戸惑っていても、それを表情に出さないのが私の常である。

愛想がないと言われがちな私の顔を、青く澄んだ瞳が映していた。

私を見つめながら、王太子は寂しげに笑って父に言う。


「なにかされた直後に報告してくれたなら、効果的な対処ができると思うのです。けれど、俺はまだオリビアに信用されていないらしい。もっと俺を頼るように言ってもらえませんか。それが公爵の望みでもあるのでしょう?」

「読まれていましたか。これも親心ということでお許し願いたい。娘には結婚前に恋を教えてやりたいのです」


ニヤリと笑って白状した父に、王太子はやれやれと言いたげな顔をして、クスリと笑った。


「初めからそう言ってくださいよ。まったくお人が悪い。しかしあなたが俺の味方であることは知っています。これからも、この国のために力を貸してください」

「承知いたしました」


最後は握手をして、会話の決着をつけたようなふたりを、私は微かに顔をしかめて見比べていた。

そういうことだったのね……。

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