悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
青い瞳が悲しげに幅を狭め、私は「え?」と聞き返した。

母親が実の息子を疎ましく思うことなどあるのだろうか?

放蕩息子ならあるかもしれないが、レオン様は人望が厚く、国王に代わって国政の全てを司るほどの立派なお方であるというのに。


納得できずに、私は目を瞬かせる。

彼はなにかを諦めているような目を廊下の奥に向けて、落ち着いた静かな声で教えてくれる。


「母上は俺と目を合わせようとしない。それはもう十年以上前からだ。一見して良好な関係を築いていたときも、内心では俺を嫌っていたのだろう。今は憎むほどの感情で、視界にも入れたくないと言いたげな態度に見える」


まさか、そんな……という気持ちで聞いていたが、そういえば……と思い当たる節もあった。

半月ほど前に、私を部屋まで送る途中のレオン様が廊下で王妃に鉢合わせたときも、寝室に踏み込まれたときも、王妃は私ばかりを睨みつけ、彼の顔を少しも見ようとしなかった。

先ほどだって、そうだ。

レオン様に呼びかけられても背を向けたままで、話をすぐに切り上げ立ち去ってしまった。


王妃が疎んでいるのは、レオン様の方だというのは本当なのだろうか。

たとえそうだとしても、十年以上も目を合わせないほどに嫌う理由は、一体どこにあるというの……?

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