悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
強い引っ掛かりを感じて眉をひそめ、考えに沈もうとしていたら、突然彼が顔を寄せて私の頬にキスをするから、驚いて気が逸れた。

たちまち熱くなる頬に手をあて、「あの、このような場所では……」と周囲を気にする私を、彼はクスリと笑ってからかう。


「そんな真面目なことを言っても、オリビアの口元は嬉しそうだよ。照れ隠し? 可愛いね」


急に茶化した態度を見せたのは、きっと私を不安にさせないようにという彼の気遣いなのだろう。

それは伝わってくるので、「恥ずかしいですわ」と、はにかんでみせた。


「今日は朝食室に行く気になれない。オリビア、俺の応接室においで。ふたりきりで食事を楽しもう」


優しい声のその提案に、「はい」と微笑んで頷きながらも、彼に気づかれないようにそっと心を黒くして、私はしたたかに考え始める。


母親に反対されるという苦しみから、彼を救いたい。私も無事に彼の妃となり、この恋を成就させたい。

そのためにはどうすればいいかしら?

そうだわ。王妃の弱味を見つけることができたなら、もしかして……。

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