悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
レオン様とふたりで朝食を取った後、彼は隣の執務室で政務に、私は南棟の三階に戻ってきて、王妃の衣装部屋に入った。
衣装整理はやらなくていいと彼が言ってくれたけど、王妃の機嫌をさらに損ねても、私たちにとっていいことはない。
それに王妃の持ち物に触れていた方が、いい考えが浮かんできそうな気もする。
その考えとは、もちろん王妃の弱味を握ることについてだ。
広い衣装部屋には、壁を埋めるようにキャビネットが二十も並び、五百着近いドレスは皺にならないように吊るされて、部屋の中央を埋めていた。
歩くことのできるスペースは、ぐるりと部屋を一周することができる細い通路だけで、私は手前のドレスから順に虫食いや汚れなどがないかを点検し、紙にドレスの特徴を書き込んで整理を行った。
同じ作業を繰り返しながら、頭の中ではこれまでに王妃と交わした会話を振り返る。
弱味に繋がるようなヒントが隠されていないかと思ったのだ。
しかし、ドレスを八十着ほど点検し終え、教会が打ち鳴らす正午の鐘が微かに聞こえても、これといったヒントには思いあたらなかった。
立ちっ放しの繰り返し作業に疲れた私は、奥にあった踏み台に腰掛けて、大きく息を吐く。