悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
久しぶりに心を黒く染めても、なにも思いつかない。

あの不遜な王妃に弱味などあるのかしら?という気持ちにもなってくる。

その弱気な心を叱咤するために、私は自分の頬をピシャリと叩いた。

王妃だって人間だもの。弱味のひとつくらい持っているはずよ。

たとえばそれは、誰にも知られたくない秘密とか……。

なんとしても見つけたい。私たちの結婚を平和に執り行うためには、王妃を黙らせないといけないのだから。


空腹は感じていないので、午餐の食事は見送ることにして、立ち上がった私は衣装整理の続きに戻ろうとする。

ドレスばかりを点検するのはつらくなってきたため、それは後回しにし、今度はキャビネットの中のものを確かめることにした。


最奥のキャビネットの引き出しには、手袋がしまわれていた。

レースのものが大半だが、使わないのに乗馬用の革製のものもあり、キャビネットひとつが丸々手袋で埋まっている。


上の引き出しから順に開けて、ドレスの場合と同じ手順で整理していく。

やっと一番下の引き出しにたどり着き、奥にあるレースの手袋に手を伸ばしたら、ふと違和感を覚えた。

この引き出しだけ、奥行きが浅い気がするわ……。

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