悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
彼の横に立ち、私は勇んで鍵を見せる。

衣装整理の最中に見つけたことを話し、この鍵の合う扉の先にはきっと、王妃の秘密が隠されているに違いないと力説した。


「その秘密を掴めば、王妃殿下はわたくしたちの結婚に反対できなくなると思うのです。レオン様、この鍵で開くドアに心当たりはございませんか?」


鍵を手にした彼は、しばらく眺めてから、「あそこかな……」と呟く。


「しかし、母上がなぜこの鍵を隠し持つ必要が……」


美しい眉間に微かに皺を寄せる彼は考えに沈んでいて、「そこに秘密があるから隠すのです」という私の答えは耳に入らないようだ。

私のように興奮することのない彼に、張り切っていた気持ちは盛り下がる。


どうやらレオン様には、王妃をやり込めようという気持ちはないみたい。

仲違いをしていても、彼にはきっと肉親の情があるからだろう。

それに加えて元から清い性分であるため、私の企みに乗るつもりはないのかもしれない。

お互いに影響し合って心は同じ色になったかと思っていたのに、まだまだ私の方がずっと黒いようだ。


静かに考え込んでいる彼の手から、私はそっと鍵を抜き取った。

「オリビア?」と青い瞳が、怪訝そうに私に向けられる。
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