悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
どうやら私は、父にはめられたみたい。
王太子を落とせという命令で城に住まわせておきながら、その実は、私が自然と王太子に恋心を抱くように仕向けたかったようだ。
その理由は、好いた相手と結婚させたいという親心らしいけれど、王族との婚姻を企む時点で父に野心がないとは言えないだろう。
そして王太子は、父の企みに気づいていながらも、私が城に住まうことを許したようだ。
ということは彼の考えの中で、私はとっくに花嫁候補に入れられていたということになる。
彼は紳士的な笑みを浮かべて「オリビア、今度ゆっくり話をしよう」と私に声をかけ、父には「橋の建造予備費については後ほど」と言い置いて部屋から出ていった。
目の前の閉まったドアを見つめる私は、『なんの努力も必要ないじゃない』と非難の気持ちを心に呟く。
今の時点ではあくまでも花嫁候補のひとりに過ぎないのだろうけど、オルドリッジ家の力は王家に次ぐと言っても過言ではない。
お人好しの王太子は拒否しそうにないし、父が強く求めれば、すぐに縁談がまとまりそうな気がしていた。
そんな私の気持ちを読んだかのように、父は「努力しなさい」と私の肩をポンと叩いた。
「なんの努力でしょう?」
「王太子殿下に恋をする努力だ。殿下は稀代の美男子。ひと目で魅了される娘が大勢いるというのに、お前はなぜ心を動かさない。この髪色だけではなく、性格もクレアに似ているのだろうがな……」
急に母の名を出した父は、懐かしそうな目をして私の髪を撫でた。
今は父を慕っている母だけど、娘時代には、なかなか父になびかなかったということだろうか?
それについて考えさせられたせいで、『恋をする努力』という言葉は胸に響かない。
いや、あえて響かせないようにしていた。
私はきっと、そういう娘らしい恋慕の感情が欠けているんだわ。
王太子の容姿を麗しいと思っても、調子を崩されて困るばかり。
心をときめかせることなど、できそうにないわ……。
王太子を落とせという命令で城に住まわせておきながら、その実は、私が自然と王太子に恋心を抱くように仕向けたかったようだ。
その理由は、好いた相手と結婚させたいという親心らしいけれど、王族との婚姻を企む時点で父に野心がないとは言えないだろう。
そして王太子は、父の企みに気づいていながらも、私が城に住まうことを許したようだ。
ということは彼の考えの中で、私はとっくに花嫁候補に入れられていたということになる。
彼は紳士的な笑みを浮かべて「オリビア、今度ゆっくり話をしよう」と私に声をかけ、父には「橋の建造予備費については後ほど」と言い置いて部屋から出ていった。
目の前の閉まったドアを見つめる私は、『なんの努力も必要ないじゃない』と非難の気持ちを心に呟く。
今の時点ではあくまでも花嫁候補のひとりに過ぎないのだろうけど、オルドリッジ家の力は王家に次ぐと言っても過言ではない。
お人好しの王太子は拒否しそうにないし、父が強く求めれば、すぐに縁談がまとまりそうな気がしていた。
そんな私の気持ちを読んだかのように、父は「努力しなさい」と私の肩をポンと叩いた。
「なんの努力でしょう?」
「王太子殿下に恋をする努力だ。殿下は稀代の美男子。ひと目で魅了される娘が大勢いるというのに、お前はなぜ心を動かさない。この髪色だけではなく、性格もクレアに似ているのだろうがな……」
急に母の名を出した父は、懐かしそうな目をして私の髪を撫でた。
今は父を慕っている母だけど、娘時代には、なかなか父になびかなかったということだろうか?
それについて考えさせられたせいで、『恋をする努力』という言葉は胸に響かない。
いや、あえて響かせないようにしていた。
私はきっと、そういう娘らしい恋慕の感情が欠けているんだわ。
王太子の容姿を麗しいと思っても、調子を崩されて困るばかり。
心をときめかせることなど、できそうにないわ……。