悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
外に飛び出すと、空は真っ青で、西に傾き始めた太陽が強い日差しを私に浴びせる。

ここは小高い丘の上。地面を平らにならした城壁の内側は、一般的な貴族の屋敷が三十棟も入りそうなほどに広大だ。

たくさんの尖塔がそびえるこの大邸宅の他にも、兵舎や使用人が居住する別棟、迎賓館に王妃のための離宮もある。

正門は南側にあり、大邸宅の裏にあたる北側は森のように木立が茂り、国王が趣味のバードウォッチングを楽しんでいるそうだ。

その森に入る手前に王妃の温室がある。


息を切らせてそこまで駆けていくと、円形でドーム状の屋根をしたガラス張りの建物が、『お入り』と言うかのように、大きく扉を開けて待ち構えていた。

一歩踏み入れば、蒸し暑い空気に顔をしかめたくなる。

王妃の温室は庭師に管理させているはずだが、今は誰もいないようだ。


種類と色形の様々なバラや、ソルベットにカーネーション。

匂い立つ鮮やかな花が見事に咲き乱れる中を、王妃がドレスの裾を汚さずに散歩できるようにと、レンガ敷きの小道がうねるように延びている。

アマーリアを探してその道を進み行けば、愛しき親友の姿を温室の中央付近で見つけた。


そこは円形に開けた空間で、お茶を飲んで休めるようにガーデンチェアとテーブルが置かれている。

アマーリアはその椅子に座らされていて、駆け寄った私は人形を腕に抱き、その体の隅々を確かめた。

よかった。顔も体もドレスも、傷つけられていないわ……。

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