悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
忙しく不在がちな母を恋しく思う幼き日、どれほどアマーリアが心の支えになったことか。

私のプラチナブランドの髪は母譲りで、アマーリアのこの髪は母の切った髪を用いて作られたものだ。

離れていても母に愛されているのだと感じさせてくれた大切な人形を強く抱きしめ、その髪に口づけた。

よく無事でいてくれたわね……。


安堵したのも束の間、突如温室内にガチャンと金属の錠が下されたような重たい音が響いた。

ハッとして、慌ててアマーリアを抱いてレンガの小道を引き返せば、扉が閉められて外から鍵をかけられたことを知る。

「誰かいませんか!」と声を張り上げてみても、ガラスの壁に虚しく反響するだけで、扉を開けてくれる者はいなかった。


これもルアンナ王女の嫌がらせだと気づいた私は、呆れのため息をつく。

それは、王女の意地の悪さに対してというより、自分に対する呆れである。

アマーリアのことになると冷静さを失い、こんな単純な罠にはまった自分を愚かに感じていた。


もっと注意深くならなくては……と反省した後は、どうしようかと考える。

室温調整のための窓は高い位置につけられ、ワイヤーで開閉する仕組みとなっているようだ。

いくつもある窓は全開になっていても、手が届きそうにない。

ガーデンチェアを踏み台にしても、きっと無理だろうと思う高さだった。

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