悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
私が選んだ水色のドレスに対し、「これにしたんですか?」と眉をひそめる。

暖色のドレスのほうが王妃の顔色が明るく見えると文句をつけられたが、だったら寒色のドレスを衣装部屋から排除すればいいのにと、私は心の中で言い返す。

もうひとりの侍女も私が持ってきた髪留めや靴に文句をつけ、王妃と三人して散々けなした後に、「まぁいいわ。仕方ないから今日はこれを着てあげる」という結論に達した。

どうしても嫌なら、私ではない侍女に選び直させればいいものを、そうしないということは、王妃たちが気に入らないのは衣装ではなく私だということになる。


「しばらくオリビアに用はないわ。お下がり」と言われ、私は一礼して王妃の寝室から出ようとする。

ドアを閉める前に「表情のない子ね。謝られた気がしないわ」という王妃の棘のある言葉を聞いた。

声を潜めていないので、それはおそらく私に聞かせるための嫌味だろう。


パタンとドアを閉めて廊下を歩き出しながら、十日前に城に来た日から今日まで耳にした私への評価を振り返る。

つまらない、感情がない、無愛想、なにを考えているのかわからない娘。

それから、『オルドリッジ公爵は、なんだってこんな可愛げのない娘をわたくしに躾させようとするのかしら』とも、王妃に言われた。

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