悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
それならば、ガラスの一枚を叩いて割ろうか?

いや、ここは王妃が大切にしている場所。人の大切なものを壊すのは気が引ける。

それに、私を王妃の侍女にした父の立場が悪くなるのは困る。


色々と考えたが、無理に脱出するのではなく、誰か人が通るのを待つことが最善であると判断する。

夕暮れになれば庭師が花に水をやりに来るだろうし、ほんの二、三時間の辛抱だ。

それにしても、暑いわね……。


重たい鉄製のガーデンチェアを引きずるようにして扉の前まで運び、そこに腰を下ろした。

アマーリアの髪を撫でていると、汗が頬を伝って顎先からポタリと落ちた。

着ているオリーブグリーンのドレスはしっとりと湿り、肌に張りついて気持ち悪い。


温室に入ってから、一時間くらい経っただろうか。

きっと今頃は王妃のお茶の時間で、それまでに戻ってくるようにと、私は言われていた。

私が現れなければ、王妃は探すように命じてくださるかしら?

いいえ、そこまではしないかもしれないわ。
言いつけも守らない駄目な娘だと、バッカス夫人と悪口を言うくらいよね。きっと……。

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