悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
女性ならば、体に傷跡が残れば悲しく思うものだとレオナルドは考えていた。

しかしオリビアは『レオン様のお命を守ることができたんですもの。名誉なことで嬉しいですわ』と明るく笑って言ってのけた。

その彼女の気遣いによって、彼は自責の念に押し潰されずにすんでいる。


(オリビアには感謝しても、しきれない。あの時、命を絶たなくてよかった……)


死することで全てが解決すると考えた彼の決意を、彼女は命懸けで覆してくれた。

今のレオナルドは、王家の血筋よりも守らねばならないものがあることを知っている。

それはこうして喜んでくれる国民と、愛しき人々だ。


レオナルドの隣には国王が、オリビアの隣には王妃がふたりを挟むようにして立っている。

両親の安心しきったような笑顔を見てレオナルドは、皆に祝福されての幸せな結婚ができたのもオリビアのおかげに違いないと、感謝を新たにするのであった。


万感の思いに浸る彼に、「レオン様、また汽笛が聞こえましたわ。ほら!」とオリビアが話しかけてきた。

歓声に掻き消されぬようにと、大きな声で言ったため、彼女の声は届いている。

けれどもレオナルドはわざと聞こえなかったふりをして、「なに?」と彼女に顔を近づけた。

そして不意打ちのキスをする。

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