悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
それからどれくらいの間、眠りの中にいたのか。
額に冷たいタオルがのせられた感覚に瞼を開ければ、薄暗い室内で、壁の燭台に照らされる私の部屋の天井が目に入る。
今は夜だと理解した後には、心配そうに覗き込む青い瞳と視線が合った。
「オリビア。目が覚めてよかった……」
ホッとしたようにそう言ったのは王太子で、私のベッドの傍に椅子を寄せて付き添っている。
助けに来てくれた上に、まさか介抱まで……?
そのことに驚いたが、すぐにアマーリアを思い出し、慌てて起き上がろうとした。
「私のアマーリアはどこですか!?」
「もう少し横になっていなさい」と肩を押さえられて、頭を枕に戻された。
彼は一旦立ち上がって窓際の布張り椅子まで行くと、座らせていたアマーリアを手に戻ってきて、私の胸の上に置いてくれた。
「アマーリア、あなたも無事なのね。王太子殿下、心より感謝いたします」
椅子に腰掛けた王太子にお礼を言えば、彼は瞳を細めてニコリと微笑んでから、ため息を漏らす。
「その人形は、大切なものなの?」
「はい。とても」
「城医が言っていたよ。もう少し温室にいたら命に危険があったと。君は罠だと気づいていながら温室に向かったんだよね? 自分の命と人形、どちらが大切?」