悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
優しく責めるようなことを言う彼から、サイドテーブルに視線を移せば、そこにはルアンナ王女が書いたあの手紙が広げて置かれている。

そういえば私は、読んだ後の手紙を階段の踊り場に落としたような気がする。

それを誰かが拾って王太子に届けたか、もしくは彼自身が拾ったのかもしれない。

手紙の筆跡が妹のものだと、兄の彼ならすぐにわかることだろう。

ルアンナ王女が私に意地悪をする話は知っていたようでもあるし、よからぬ予感がして温室まで私を捜しに来てくれたということなのか。


『罠』という言い方をしたのは、私なら簡単には騙されないと、思っているからなのかもしれない。

しかし愚かなことだが、私は閉じ込められるとまでは予想していなかった。

アマーリアを取り戻すことだけに必死で、壊される危険性を考えれば、冷静な判断ができなくなるのだ。

そのようなことを説明してから、「アマーリアがいないと、生きていけないかもしれません」と答える。

その返事を非難せずに、「そうか」と受け入れてくれた彼は、アマーリアに手を伸ばす。

思わずその手をかわしてしまったら、彼は苦笑いした。


「人形の顔をよく見たいと思っただけだよ。決して危害を加えたりしないから安心して」

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