悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
涙は乾いていないけれど、子供らしい好奇心には勝てず、立ち上がって大きな紙箱の蓋を開けた。

覗き込んだ私の目は丸くなる。

自分によく似た人形が、箱の中に座っているのだ。

母は人形を取り出して、私の腕に抱かせた。


「この子がオリビアのお友達になってくれるわ。名前はあなたがつけてあげてね。嬉しいこと、寂しいこと、なんでも話せる親友よ」


私の周囲は、弟以外は大人ばかり。友達と呼べる子供はいなかった。

そのため親友という言葉は魅力的に心に響く。

同時に、この人形を与えてくれた母の愛情を深く感じて、泣き顔には無邪気な笑顔が戻っていたーー。


王太子の膝の上にのるアマーリアを愛しく見つめ、説明的な口調で思い出話を締めくくる。


「母の期待通り、アマーリアを親友としてからの私は聞き分けのよい娘になりました。寂しくても悲しくても、人形を抱いていれば心が落ち着くのです。私も連れていってとは、二度と言いませんでした」


ウィルフレッドの後に、もうひとり弟が生まれた。

私と七つ離れているので、まだ十歳の少年だ。

ウィルはオルドリッジ家の跡継ぎで、末の弟が成長した暁にはエリオローネ辺境伯を名乗ることだろう。

弟が大人になるまで母は領主としての仕事が忙しく、今は年に数回しか顔を合わせる機会はない。

それは仕方ないことで、ただ元気でいてくれさえすればいいと思っていた。

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