悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
柱時計はドア近くの壁際にある。

壁の燭台には一カ所しか火が灯されていないので、文字盤は見えにくいが、三時近くを差しているようだ。

私が彼に発見されてから、八時間ほどは経っていて、そのうちの五時間を説教に費やしたなんて……。

信じられない思いで「五時間もですか?」と確認したら、なぜそこに引っかかるのかと彼は言いたげに首を傾げ、平然と答える。


「そう。どんな相手でも誠心誠意、心を尽くして話せばわかってくれるものだ。初めはふて腐れていたルアンナも、二時を過ぎた頃に泣いて反省を口にした。後で君に謝りたいと言っていたよ」


表情は変わらずとも、私は唖然として麗しき王太子を見つめる。

王女の涙と謝罪は心からの反省ではなく、きっと深夜まで及んだ説教につらくなったからではないだろうか。

人のよい王太子は怒鳴りつけるような怒り方をしないと思われるが、その善人ぶりで懇々と諭され続けるのは、精神的に追い詰められそうだ。

まるで優しい拷問みたい。


思わず私に危害を加えたルアンナ王女に同情し、同時に自分の身を心配する。

彼がこのまま朝まで部屋を出ていかず、私にも綺麗事を並べて話し続けたらどうしようと危ぶんだのだ。

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