悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
どういうことなの!? まさか……。

髪飾りを見つめて「魔法?」と呟いたら、プッと吹き出し笑いが降ってきた。


「可愛いことを言うね。残念ながら俺は童話に出てくるような魔法使いではないよ。奇術という言葉を聞いたことはない?」


王太子の説明によると、子供の頃、宴の余興に大道芸人の一座を城に招いたことがあったそうだ。

その中に奇術師がいて、強く興味を引かれた彼は、ひと月ほど奇術師を城に泊め、その技を習ったらしい。

旅の一座が王都を去った後も、勉学の合間に独学でその腕を磨いたという話だった。


奇術という言葉は聞いたことがあっても、実際に目にするのは初めてのこと。

幼い日に感じた久しぶりの好奇心が、胸に広がるのを感じていた。

もっと見たいわ。今日が無理でも、いつかまた奇術を披露してくださるかしら……。


意外な特技を披露してくれた彼は、腰を屈めて少しばかり顔を近づけると、銀の髪飾りを私の横髪にとめた。

表情に表れずとも、その行為に十分に鼓動を跳ねらせ、「くださるのですか?」と驚きの中で尋ねる。


「ああ。お詫びとお礼だよ」


お詫びとはルアンナ王女の悪事に対してのものだとわかるが、お礼の意味がわからない。

目を瞬かせた私に王太子は、人のよさそうな笑みを浮かべて言った。


「オリビア、妹を許してくれてありがとう」

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