悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
その言葉を最後に会話を終わらせ、彼は私に背を向ける。

シルクのブラウスに黒のズボンという、王太子にしては飾り気のない装いを好む彼。

しかし簡素な装いならなおのこと、その体躯のバランスのよさが伝わるというものだ。

ドアに向けて歩く姿も、そっと開けて出ていく所作も優雅で気品があり、目が奪われそうになる。

姿も心も美しい人だと感心しつつ、やはり自分とは掛け離れた考え方をする彼に苦手意識を覚えたら、ドアは閉められ静けさが増した。


柱時計の振り子の音のみが響くひとりきりの室内で、私は大きく息を吐き出して緊張を解いてから、髪飾りに手を触れた。

私らしくなく、心が不安定に揺れているのを感じる。

仕返しをするつもりでいるけれど、お礼の品をいただいてしまったわ。

どうしたらいいかしら……。
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