悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
願わくば、俺の色に染まれ
◇◇◇
王太子に髪飾りを贈られた日から、半月ほどが経つ。
夏は盛りを越えて、幾分過ごしやすい気温となっていた。
私の体調はすっかり回復し、王妃に使役される日々に戻っている。
王妃の嫌味程度なら聞き流すことができるし、最近は王女からの嫌がらせを受けていない。
総じて平和の中で過ごしていられるのは、王太子が妹を懇々と諭した効果だと思われた。
その点において彼には感謝しているけれど、私に謝りたいと言ったはずの王女からは、まだ謝罪されていなかった。
やはり反省などしておらず、私との関係を改善させる気もないということだろう。
王女がそのような態度でいるならば、どうしようかと迷っていた私の心も、仕返しをする方向で傾き止まる。
好機を虎視眈々と狙い、その時が訪れるのを待ちわびる。
早く仕返しして、スッキリしたいわ……。
時刻は十六時半。
自室で式典用の正装から、普段使いのデイドレスに着替えを済ませた。
手伝ってくれたメイドが会釈して退室すると、私はアマーリアを抱いて椅子に腰掛ける。
丸テーブルには、先日編み上げたばかりのレースのテーブルクロスがかけられている。
その上に紅茶のカップがふたつ。
ひとつは空で、アマーリアのもの。
私のカップにはメイドが注いでくれた紅茶が、香り高い湯気を立ち上らせていた。