悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
アマーリアの口にカップをあてて飲ませるふりをしてから、自分のカップの紅茶を味わう。

今日は久しぶりの外出で疲れたわ。
その代わり、今日は王妃のお世話をしなくていいと言われているから、それは楽かもしれないわね……。


正午過ぎから半刻ほど前まで、私は新しく建造された跳ね橋の竣工式に列席していた。

その橋は王都の外れを流れる大河に架けられていて、王太子自らが指揮をとり尽力した公共事業ということだ。

今日初めてその橋を目にしたが、国内では類を見ない豪壮かつ近代的なもので、式典も立派であった。


式典での私は王妃の侍女ではなく、オルドリッジ公爵令嬢としての立場で出席し、父の隣から壇上で挨拶をする王太子を眩しく見ていた。

王族男子の正装は軍服だ。

濃紺のズボンの上の白い上着は、金の肩章や斜めがけした赤帯の大綬、飾緒や勲章で飾られて、金のサーベルを腰に携えた姿は凛々しく目に映った。

そこにいた彼からは、奇術を披露してくれた気さくは感じられなかった。

いつでもそのような、王太子らしい威厳に満ちた態度でいてくれるなら、私は戸惑わずにいられることだろう。

優しい笑顔で口にされる綺麗事は、苦手なのよ……。


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