悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
しかしその疑問をメイドにぶつけても、余計に困らせるだけだとわかるので、余計なことを聞かずに「わかったわ」と了承した。

彼女が会釈して退室してから、私も自室を出てドアに鍵をかける。

そしてメイドに教えられた『南棟の一階の応接室』に向けて、廊下を歩き出した。


螺旋階段を一階まで下り、長い廊下を進みながらも、呼ばれた理由について思案していて、ひとつの可能性に思いあたった。

まさか、見初められたのかしら……。


母譲りのプラチナブロンドのこの髪色は稀有なもの。どうしても人目を引いてしまう。

琥珀色の瞳は父譲りだが、全体的な特徴は、三十半ばを超えた今でも美女と評価されている母に似ていると言われる。

母の美貌を受け継いだせいで、今まで出席した宴では、望まぬアプローチを受けることも多かった。

そのような男性たちに対しては、素っ気ない態度で軽くあしらうことができるけれど、相手が他国の王子では対応を考えさせられる。

それに加え、ルアンナ王女に睨まれて、王家にとって邪魔者だと見なされるのも困るわ……。


指定された応接室までもう少しのところで、腰のあたりで手を組み、廊下をウロウロしている青年がいることに気づいた。

朱色の目立つ上着を着て、癖毛のブロンドの髪は顎下で切り揃えられている。

背はひょろりと高く細身で、男性らしい逞しさは見られない。

わざわざ廊下に出て私を待っている様子の彼が、アンドリュー王子だ。

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