悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「ジェイル・フランシス・セオドア・オルドリッジの娘、オリビア・パトリシア・オルドリッジと申します。お声をかけてくださり、恐悦至極に存じます」

「なんと、カルディンブルク王国の名門、オルドリッジ公爵家の御令嬢であらせられましたか!」


大袈裟に驚いてみせた王子は、その後にすかさず、私の望まぬ展開に持っていこうとする。


「ルアンナ王女、お茶の時間をオリビア嬢もご一緒に。こうしてご挨拶できたのもなにかの縁です。オルドリッジ公爵家と我が国はワインや工業製品の交易もありますので、ぜひとも語り合いたい」


表情には出さずとも、面倒な提案をした王子に非難の気持ちが芽生えていた。

やめてよ。私にはアリンガム王国との交易の話はできないし、王子と親しくなりたくもないのに。

私たちの間に立つ王女をチラリと見たのは、絶対に駄目だと断ってくれることを期待したからだ。

それなのに……。


「お優しいルアンナ王女、僕の願いを聞いてくれませんか?」と王子にしたたかな笑顔で問われたら、王女は頬を染めて「はい」と頷いてしまう。

私はこれから王女の恋路に巻き込まれるのね。
勘弁してもらいたいわ……。

心の中で嘆息した私だったが、仕方なくふたりの後について廊下を進み、応接室に足を踏み入れる。

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