悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
そこはシックで格調高い調度類が配された部屋。大きな開口の窓からはバラの花咲く中庭を眺めることができた。

王子の近侍や王女付きの侍女は壁際に静かに立って控え、給仕のためにメイドが数人出入りしている。


ルアンナ王女は上座の長椅子に王子を座らせて、自分はテーブルを挟んだ向かいの、一人掛けの布張り椅子に腰を下ろす。

王女の隣の椅子に私も着席しようとしたら、「オリビアさん、ちょっと……」と手招きされ、「なるべく会話に入らずに黙っていなさい」と厳しい声で耳打ちされた。

素直に頷いた私だが、命令に従うというよりは、その方がこちらにとっても都合がいいという意味での同意であった。


マホガニーの木目が美しいテーブルには、青地に金で絵付けをした美しいティーカップが三つと、焼き菓子やサンドイッチの皿が並べられた。

私は常々少食であるため、小さなスコーンひとつだけをメイドに取り分けてもらい、ジャムをつけて口にしながら、ふたりの会話を黙って聞いている。

王女は王都で流行りの音楽や美術について説明したり、自分が主催する文学サロンについても知識人ぶって得意げに話していた。

それに対し王子は笑みを浮かべて相槌を打っているが、なんとなく上の空であるような印象を受ける。

彼の視線がチラチラと、私に向けられるのを感じていた。

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